2011年3月29日火曜日

被災地に足を運んで

昨日、東北地方に行ってきた。
写真や映像で十分悲惨な状況とは分かっていたけれど、その場に立つと眼前に広がる光景にただ言葉を無くしてしまった。
でも避難所の人たちは思っていたよりもずっと元気で、もはや前を向いて進むしか無いこの状況を僕らよりずっとしっかり受け止めているように見えた。
物資もだいぶ届いているようで、僕らの持って行った物の中ではトイレットペーパーや下着、女性用の生理用品なんかより、タバコが一番喜ばれ、今の被災地の状況を物語っているように思えた。
扉をがらりと開けた時、「何だこいつら」って感じの顔をしていたおじさん達が、「タバコもありますよ」
と言った瞬間にその場がワッと沸いて「タバコ、タバコ」と言いながら一気に僕らを受け入れてくれた。
「タバコはなかなか欲しいって言えないのよ」と、たき火の横で久々のタバコを美味そうに吸っていた。
物を届ける側の僕らは被災者達が食べ物や生活用品を最も欲しがっていると思っているし、そう思いたい。
可哀想な状況で、過酷な環境で、肩寄せ合っている人達に優しく声をかけたい。
そしてホッとしたい。来て良かったと満足したい。
でも、実際の彼らは遠くから状況をただ見てる僕らよりもずっと強く当たり前のように今の状況に立ち向かっている。
そしてお決まり通り、僕らの方が勇気づけられてしまう。
石巻の町には鼻を突くヘドロの匂いがまだたっぷり漂っていた。
まだ電気の通っていない学校の避難所に荷物を届けた後、被災者の方々としばらく立ち話をし、冗談を言い合いながら、
「タバコでも酒でも、女でも何でもいいんで欲しいものを素直に言って下さい」と言うと、横にいた女性が
「男はダメなの?」と返してきたので
「僕らで良ければ」と言うと
「あら、選ばせてくれるの?」と照れくさそうに笑っていた。

想像を絶する凄惨で過酷な状況で家族や友人を無くした人達がちゃんと生きている。
東京での買いだめやイベント事の自粛なんかしている場合じゃない。
いつも通り暮らせばいい。
そして行ける人は時間を見つけて被災地に行くべきだ。
その光景を目に焼き付けてくれば良いと思う。
忘れないために。
彼らは話を聞いて欲しいんだ。
この状況を本当の意味で知って欲しいんだ。
心配しなくても100人や200人行ったところで被災地が混乱するほど規模は小さくない。
太平洋側の東北から関東にかけての海岸線はほぼ全て津波にのまれているんだから。
また来月も時間を見つけて足を運ぼうと思う。